ピークスタジオ

Category:
Apartment, Architecture, Renovation
Location:
神奈川県川崎市
Completion:
-(予定)
Photographer:
Nao Takahashi

ダイロクパーク / D6Park

場所の価値を生み出しながら行う、やわらかい開発

新城テラスの設計を機に、弊社事務所を移転した。その移転先が第六南荘である。

街に開いた事務所にしたいという想いから1階を借り、表と裏を入れ替える形にしブロック塀を撤去、バルコニー側からのアクセスとし、前面道路に向けて顔をつくることにした。数年をかけて、1階住戸は全て同じ形に整えることになった。

建物の建替えでは、その場所にあった建物の様子や印象を消して作り変えることが多く、上手く引き継げることは稀である。第六南荘は50年近く認識されている建物であるため、どこかから持ち込んだ価値ではなく、その場所で培われ、地域に受け入れられやすい価値をつくりながら建替えるということが重要であった。

その価値づくりを助走する形で、第六南荘は少しずつ作られてきた。

この4年間で、1階4つ並びの北端に焼菓子屋が出来、その隣を2区画に分けてチーズ専門店と珈琲焙煎屋が出来、最後に、訪問看護ステーションとお茶スタンドが出来た。ここにやってきた店舗は、新城テラスを作ったことで登場してきた街のプレーヤーたちである。

店舗ができる毎に階段が加わり、少しずつデッキが増えていった。階段やデッキの造作に使われた杉材はすべて同じ材木屋から購入し、強固なものではなく容易に更新可能な設えとしている。そして、現在、店舗全体をつなぐ場所として、裏庭をハーブ園に改装、角地の特性を活かし2方向からのアクセスをつくり、回遊性をもたせることで裏のない公園のような場所へと変えている。また、1号室をコモンスペースとして捉え直し、使い方を入居者同士で議論し始めた。

移転当時、現在の状況を想像するには至っていなかったが、設計事務所が街に入り込み、街の中で活動するのであれば、自分たちの周りは豊かな場所にしたいという希望が漠然とあった。そして、地域の人にとっても街にとっても相談所のような場所として寄与したいという思いから、ダイアログを積み重ねてきた。その様々な活動や小さな設計が現在につながっている。

*2021年度 GOOD DESIGN AWARD 受賞
*新建築2021年2月号 掲載

*写真 髙橋菜生

before(2015年)