今、建築を志す学生に勧める本

2020-04-20

CIATという東北大学発の若手建築人の集まりでの企画 “今、建築を志す学生に勧める本” というテーマで、本をいくつか紹介させてもらったので、ここにも掲載します。
自粛期間で家にいる時間が長い今、自らの生活を豊かに創造する能力、微細な変化を捉える眼差しを(自分を含めて)磨かなければならないと思う。そういう意味で、この2冊。

コンヴィヴィアリティのための道具/イヴァン・イリイチ

2008年に都市部の人口が郊外の人口を超えたと聞いた。都市化は人類の大発明でもあるが、一方で今回のような脆弱性も垣間見える。イリイチはこういった成長の良い面と、その後にやってくるマイナス面を発展における二つの分水嶺と言った。今の状況の中で、リモートワークやwebによるコミュニケーション、他にも大きな変化が今後あるかもしれない。
しかし、その制度や社会の流れは本当に人を豊かにするのだろうか?
受け入れざる得ない道具や制度ではなく、自らが創造的に使いこなせる道具や制度が必要だ。そして、それはどんなものだろうか。自分も含めて考えていきたい。

ティンカークリークのほとりで/アニー・ディラード

勤めていた設計事務所を辞めてこれから独立しようとしている時、持て余した時間をつかって読んだ。
この本は著者が都会を離れ小川のほとりに住みながら、 延々と自然を見つめ、その奥深い世界を描写した随筆なのだが、葉から落ちる水の滴りすら見逃さない著者の眼差しに、今僕たちが身を置く環境の中にも微小な変化や、複雑なディテール、多様な世界があることに気づかされた。
目に見えない脅威、溢れる情報、複雑になりすぎた人間関係に気持ちが落ちつかない今こそ、改めて見落としてきた日々の差異、細やかな自然のルールを自分の目で見つめなおす時ではないかと思う。

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